
GENZAICHI
File No.006 Hiroshi Iwasaki
Music
GENZAICHIゲンザイチ-File NO.006 岩崎弘さん

音響、照明、映像制作…etc.
そしてイベント運営。
裏方として切り拓いた
「仲間たちとの音楽の扉」
●プロフィール
岩崎 弘さん IWASAKI HIROSHI
総合学園ヒューマンアカデミー大阪校
マスコミ芸術カレッジ音響エンジニア専攻
2006年卒
勤務先:ヒューマンアカデミーミュージックカレッジ主任
合同会社ミモロワークス代表
株式会社OURSONGS取締役
仕事内容:講師(ヒューマンアカデミー)
ステージエンジニアリング全般/レコーディングエンジニア全般/音楽コンテンツ制作/イベントオーガナイズ(ミモロワークス/OURSONGS)
モットー:楽しくゴミ拾いできる人になること。何事も楽しんで取り組む、120%で取り組むことをモットーにしてます。やりたいことをやるではなく、やりたい仲間と仕事するがテーマで仕事をしてます。
座右の銘:為世為人
趣味:人間観察



設営も指示だけではなく、率先して行い組み上げていく。OURSONGSスタッフも役割を把握しており、現地スタッフとともに日夜作業に勤しんでいた。

声優・俳優、ゲーム、音楽、動画、マンガ・イラスト、デザイン、IT、スポーツ、ビジネス、フィッシング、ヘアメイクなど。多岐にわたるカレッジの中で、各業界と連携した実践的なノウハウを学び、即戦力となるスキルを身につけられるのが総合学園ヒューマンアカデミー。学生たちはやがて社会でそれぞれの道を歩んでいくわけだが、具体的にはどんな職場でどんな仕事をしているのか? 卒業から10年以上を経たヒューマン出身者たちの“現在地”を、本人のインタビューと共に紹介する当企画。
第6回目は、大阪校で音響エンジニアを専攻していた岩崎 弘さんをクローズアップ。現在ではヒューマンアカデミーで講師を勤める他、同校を卒業した仲間達とイベントオーガナイズなどのミュージックビジネスに意欲的に取り組んでいる。
5000人規模の音楽フェスを裏から支える
ミュージックカレッジ主任講師

音響監督の池田さん(右)もヒューマン卒業生。今回のOURSONGSの規模が拡大するとのことで、経験のある彼に助っ人依頼が届き快諾して参加。(今後GENZAICHI掲載予定)
2024年11月16日、沖縄県名護市にあるNAGO AGRI PARKにて行われた音楽フェス「OURSONGS IN THE PARK’24」。11月の沖縄の爽やかな海風とともに聞こえる5000人の大声援に包まれたバックステージでは、山のように、しかし整然と配置され網の目のようなワイヤーで繋がれた音響装置の前に彼はいた。
岩崎 弘。

その笑顔と特徴的なおかっぱ頭は一度会えば忘れない、その人となりを一目で印象付けてくれる。音響や照明といったステージの裏方を司るセクションを統括する彼は、本イベントを企画運営する株式会社OURSONGSの取締役、またライブ、PA、映像制作などを手掛ける合同会社の代表でもある。つまり現場でバリバリ活躍するエンジニアであるが、一方でヒューマンアカデミーのミュージックカレッジ主任も兼任している。

ヒューマンアカデミーに出勤時の岩崎さん(左)。今後掲載予定のOURSONGS舞台監督の池田さんと談笑する様子。学校にいるとイベント時とは異なり、自然と先生の顔になっている。
若き日は同校でエンジニアとしての基礎を学び、現在はプロのエンジニア/プロデューサーとして日々生きた技術や経験をアップデートする岩崎さんが、明日のミュージックビジネスを担う若者たちの前で教鞭を振るう。これ以上の説得力があろうか。これこそがヒューマンアカデミーの目指す一つの理想形といえるが、彼がその理想的循環に足を踏み入れたのはどういった動機からだったのだろうか。



音楽と関わっていたい
その想いが学びと出会いに繋がった
「高校時代にスカやパンクが好きで自分もやってみようというよくある動機(笑)でバンドを初めて。当時はランシドが一番好きでしたね。それで一通り楽器もやってみましたが、進路を考えた時に周りの楽器スキルの高い仲間を見ていて、自分は出役という方向ではなく彼らのような人達と一緒にできることはないか、という視点で考えるようになったんです。それでヒューマンアカデミー大阪校を選びました。単純に心斎橋という華やかな場所に憧れがあったというのもあります(笑)」。そんな若さゆえの勢いで進路を決めた岩崎さんだったが、その選択は吉と出たようで。
「音楽部門だったというのもあると思いますが、先生と生徒の距離がとにかく近くて。例えば授業の後にご飯行って先生の馴染みのクラブに一緒に出かけたり、友達感覚で接してくれたお陰で、音楽って面白いな、音楽と関わっていきたい、というモチベーションを持たせ続けてくれる環境を作り出し、維持してくれていたのはとても感謝しています。先生というよりも業界の先輩みたいな感覚です」。そんな人と人との繋がりを大切にする同校の気風は、授業以外での面や進路に関しても同様だったようだ。

「授業の合間に他ジャンルを専攻している生徒とも、例えば休憩室などで顔を合わせているうちに仲良くなり知見を広げることもできましたし、卒業後の進路についても、ただ斡旋するだけではなく、インターンのような形で進路先に出向きまず生徒の人となりを見てもらう、というような形でした。実際私も京都のクラブで研修をしてから、お互いが納得したうえで就職させてもらいました」。しかもその京都のクラブへの就職がきっかけで現在に繋がる更なる出会いと経験を得ることとなる。
卒業後も繋がるアカデミー人脈で
仕事の幅が飛躍的に拡がる

就職先での京都のクラブでは、音響や照明などのステージ関連エンジニアを実際の現場で学んでいく日々を送っていた岩崎さん。当時のことを振り返ると「実際現場に出てみると、学校で学んだものは知識としてはあっても、在学時は勉強としか捉えていなかったので、実践できるところまで昇華しきれてない、ということを突きつけられましたね(笑)なかなか学生だとそれを想像するのは難しいですけど」。実はその当時からすでにヒューマンアカデミーの講師も兼任していたので、その苦労は人一倍だったに違いない。

ともに同じ目標を持ち、尊敬しあい5000人規模の音楽フェスを成功させた2人(左はGENZAICHI File No.003に登場した花岡さん)。終盤になっても緊張感を持って対応していた。
そんな二足の草鞋の目紛しい日々を過ごしつつも、同地では現在に至るいくつかの出会いが訪れる。GENZAICHI FileNo.003で登場し、「OURSONGS」を一緒に運営する花岡さんもその一人。同校の卒業生且つ現役の講師としての共通項があったのはもちろんだが「考え方が似ていたし、なにより2つ上なのに先輩感がまったくない、良い意味でですよ(笑)」というお互いの相性の良さが、集客5000人規模の音楽フェスをタッグでオーガナイズするまでになるのだから人生わからないもの。
更に「OURSONGS」とは別のもう一つの岩崎さんの現在の城である「ミモロワークス」を一緒に立ち上げることとなる仲間との出会いもこのクラブ時代。つまりその京都のクラブとは、岩崎さんにとってその後の人生に大きな影響を及ぼす大きなモノを与えてくれ、加えて初めて社会と対峙し厳しさも味わった場所であるわけだ。そんな場所での経験を得るきっかけを与えてくれたのもヒューマンアカデミーが起点となった“出会い”だったのだと言えよう。

「アカデミー講師」「OURSONGS」そして「ミモロワークス」
出来ることは増えていき、やりたいことは果てしなく拡がってゆく
「OURSONGS」は同一のコンセプトを持つ、いわば“自分たちのための”フェス運営組織だが、もう一つの「ミモロワークス」はより多角的にBtoBを意識した、ステージ運営や音楽コンテンツ制作のためのノウハウをビジネスに昇華させた会社組織。2020年に設立し、現在ではライブレコーディング、PA、プロデュース、スチール&映像制作、イベント運営、果てはアイドルプロデュースまでと扱うジャンルは多岐にわたっているが、それも大元を辿れば知識と経験値に基づいた確かな岩崎さんのエンジニアリングに加え、運営手法やビジネス面など、実践的かつ包括的なカリキュラムがあったからこそ、だ。


曇天から雨天と何度も入れ替わる生憎の空模様だったが、それも含めての長時間フェスを来場者は楽しんでいるかのように笑顔でパチリ。仲間たちと心の底から音楽を満喫しているのが伺える。
「テクニカルなことはもちろんなのですが、アカデミーの特筆すべきポイントはそのジャンルを総合的に学べる点です。音響専攻でも今で言うDTM、実際にPCで音楽を作成する授業があったり、音楽業界のシステムやビジネス的なことを学べる機会も当時からカリキュラムには組み込まれていました。今は私がどんな学びが生徒にとって実になるかを考えなければいけない立場。とはいえ座学だけで学びきれないことを痛感している身なので(笑)、講師としては外で何かができる機会をどれだけ作れるか、そしていかに興味を持たせ続けられるか、というのは考えています。
「OURSONGS」そして「ミモロワークス」としては、やりたいことをやるだけではなく、やりたい仲間とどんなことができるか、にこだわっていきたいですね。夢はお客さんが100%楽しめるイベントを仲間たちだけで作ること。そしてそのためには同じ志を持つ仲間を増やしたい。だからこそ自分たちでイベントを運営し、生徒たちを関われるようにしている部分もあります。彼らに実践の場を提供することにもなりますし、彼らの中から我々と同じ方向を向いている仲間が一人でも多く生まれてくれればこんなに嬉しいことはないですね」。



先輩から後輩へのアドバイス

「OURSONGS」では実際に生徒さんや卒業生にスタッフとして参加してもらっていますが、それ以外にもヒューマンアカデミーではより実践的なカリキュラムがあるので、それらの貴重な場を自分ごととして取り組んで欲しいですね。在学時にはなかなか気付けないものなのですが、教わるという受動的な立場ではなく、自分から現場に参加していく、という自分中心で考えて活用して欲しい。その取り組み方が実際に現場に出た際に大きな助けとなってくれるのは間違いないので。
それに、続けることの大切さを心に刻んでおいて欲しいですね。若い頃はなかなかそういう思考にならないと思いますが、初めから成功している人はいないですし、目指す人と同じだけ努力をし続けることで、目標は達成できるものだとこの年になって身に染みています(笑い)」。
PHOTO:上新庄写真センター / TEXT:藤川経雄 / EDITORIAL:賀川真弥